したのはいいのですが、なんだか「サブスクの、モリサワとの抱き合わせのオマケ」みたいな立ち位置になっちゃって、私からしたら「これでいいのか写研? プライドはどこ行ってん??」みたいなモヤモヤ感が。昔はわざわざPCをカスタマイズした写研専用機を売っていたのに。あくまで秘密主義と殿様商売を貫くその孤高の精神はどこへ行った? でありますが。
私は大昔に印刷会社で写研の電算写植のオペレーターをしていましたので、もちろん写研の文字は好きでした。でも、その殿様商売っぷりを知ってしまうことにも。だからMacが台頭してDTPに舵を切った時、「ああもう写研にお金を払いたくないんだな」って思いましたし。あの契約書の金額だと、印刷会社すら写研を見限りますわ。
だいたい、ガタガタのアウトランのまま直さずに放っておいたから、今更こんなことになっているんだよ…みたいな。当時からずーっと言われていました、文字がガタガタだって。それは書体見本帳を見ただけで分かります。昔は仕方が無かったかも知れませんよ、でもPC専用機に移行する時点で直すことはできたでしょう。
であと、フォントとしては多分ですが文字数が無いと思います。「乖離」の乖すら出ない、「骨粗鬆症」の鬆もムリ…みたいな。「潰瘍」の瘍も作字(印画紙で偏と旁を切り張りして文字を作ること)が大変なんだよー…みたいな。これも文字数を拡充すべきだったでしょう。昔売っていたダイナのリョービフォントのナウM・Gも第2水準が揃っていません。手動写植機の収録字数が多分これだけだったんだろうなー…なのですが、のちのリョービからでたフォントではJIS第2まで拡充されました。
昔、「ナールを書こう」「ゴナを書こう」みたいなそのものズバリな書名のレタリング本があって、そこに「書体を作るには5,400字必要だ」みたいなことが書かれていたような記憶があるので、その文字数から考えたらJIS第2水準がほとんど出ないという収録字数のはず。電算でJIS第1・第2水準をザーッと打ったものを持っていますが、おにぎりマーク(出ない文字)がいっぱい並んでいます。写植の時代はそれでも仕事になっていたのでしょうが、今の時代だと最低JIS第2ぐらいまでは揃えてほしいなぁ…と感じるでしょう。
ちなみに、タイプバンクの「書体を創る」という本には「書体を創るには7千字必要」と書いてあったような気がしますので、JIS第1・第2を揃えようと思うとその文字数になりますな。
まぁ、これは日本語の漢字の運用も悪いとは思うんですけどね。常用漢字しか簡略化しなかったことと、JISの規格の制定でで勝手に文字を簡略化しっちゃったので文字の形が混乱して…という現状なのと、無駄な漢字が多すぎるのとで、漢字が使いづらいったらありゃしません。そんな、フォントに2万字もいりますか? って私は思うのですが。
新しいフォントに目を慣れさせるには、結構な時間がかかると思います。正直、今の人が写研の文字を見てどう感じるか? というところもあります。写研包囲網ができて、写研が無くても似たようなフォントが溢れている現状で、今更写研だーと言って出されても、「ふーん」「なんか昭和レトロな古臭さだよねー」になっちゃうかも…ということも考えます。使えなかった期間が長すぎたので、すっかり忘れられた存在になっちゃっていましたよね。もう、写研は書体を墓まで持って行くのでは? と思っていましたから。
なので、また写研の文字が溢れるぐらいまでに使われるようになるか? と言われれば分かりません。でもまぁ、使いたい人たちのために、埋もれさせるようにはマシかな? という感じでしょうか。今のところ、ピンポイントでしか使われないだろうなーという予想ではあります。
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復刻した写研書体にあまり興味を持てないのは、字形が変わり過ぎているからいうところもあります。「写研っぽい何か」になっちゃっています。石井ゴシックを、書体見本帳と比べただけでも「な」と「で」の字が違うんだよー…となっています。それは、発表段階から知っていたので。
公式が、パチモンみたいな偽物を作ってどうするんだよ…みたいな気分でしょうか。 どうしたって改悪されてしまうのですわな。「できるだけいらんことせんと、そのままの形で復刻してほしい」という願いはかくも無残に粉々にされ、今までの100%純粋な写研から、よその血が混じって好き勝手に弄り回されてできたエセ写研になってしまっています。書体は芸術だという計算された美しさが失われた感じです。
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